Part1に引き続き、今回は慶應義塾大学システムデザインマネジメント(SDM)研究科が主催するイベントSportsX2018に参加してきましたのでそちらのレポートになります。

目次
■「テコンドー日本代表強化現場における
測定評価の取組」~サイエンス・テクノロジーをいかに活用するか~
次のセッションはテコンドーに関しての強化戦略。強化の場でのテクノロジーの活用という議題は様々なカンファレンスで耳にするのですが、テコンドーについてのものは全く聞いたことがなく、非常に楽しみなセッションでした。
セッションを聞いたあとの感想は、テコンドーめっちゃテクノロジー活用してるじゃん、、、!!ということで、ただただ驚きました。笑
誤解を恐れずに言えば、何か目新しいモノや最先端の技術を取り入れているわけではありません。しかし、映像解析やコンディショニング、栄養、フィジカル、メンタル面などの周辺スタッフを専門につけ、そこで様々なツールを活用していました。
例えば以下のようなものです。
コンディショニング・栄養:ONE TAP SPORTS
他にもVRを活用したイメージトレーニング、ミツフジ社製のhamonを着用しての練習試合中の生体情報モニタリングなどを試験的に行っているようです。
メジャースポーツでかつこのような場で取り組みについて発表している種目であれば、多くのところで使われているかと思います。
ですが、テコンドーという”マイナースポーツ”でこのような取り組みがされているのは非常に驚きました。
これらのツール、やはり使用にはお金がかかります。また、導入できたとしてもそれを適切に使う人手が足りないという話もよく聞きます。
あまり潤っていないスポーツではこのようなツールを導入するのに消極的にならざるを得ないのです。そこをしっかりブレイクし、ここまでの環境を整えているのはびっくりでした。
(ちなみに専門スタッフは各種1名であり、作業量が多い中頑張っているとのこと、、、)
また、本セッションで一番ビックリしたのが、
もちろん匿名化など選手に不利益がないような配慮はしていますが、極力選手のデータをオープンにすることで、オープンイノベーションを推進しているとのことです。
公演中でも是非コラボしましょう!と謳っていました。
日本のスポーツ界はデータを過度に外に出したがらない傾向にあると感じていたため、このような施策を協会が行っているのは非常にびっくりしました。
フィギュアスケートなんかは肖像権とかが大変そうで、まぁこのようなことはできなそうですね。。。
テコンドーでうまくいったのは、何より現場での危機意識が強かったことだそうです。
年間多くても100日程度しか日本代表として練習できず、それ以外は各々の練習場所に戻ってしまうことから、代表練習期間にしかできない練習を取り入れることを決めたそう。
しかし、決してテクノロジーありきなものではなく、アスリートファーストを念頭に置き、行動しているとのことでした。
■いつでもどこでも準備なしに誰でも使える選手力強化のための姿勢解析技術(NICON)
NICONのスポンサーセッションでは、開発中の姿勢解析カメラと姿勢推定の独自アルゴリズムについて発表をしていました。
人間の動きをキャプチャする方法は様々ありますが、バイオメカニクスの研究でもよく用いられるモーションキャプチャシステムはマーカーをつける必要があるなど介入が大きくなること、キャリブレーションの手間がかかるなどがあります。
また、IMU(慣性計測、加速度センサー、ジャイロセンサーなど)での計測は、初期値に対しての相対的な変化量しか算出できず、誤差が大きくなります。
最近話題の画像解析による姿勢推定では、簡便ではあるものの2次元のものが中心で、奥行方向の精度がでないなどの問題点があります。
今回のシステムは、複数の専用カメラを使用することで3次元の姿勢推定をマーカーレスで行うことができるもので、上記の問題点を解決できるものになります。
キャリブレーションの必要もなく、取得点が多いことからロバスト性も見込めます。
現在はこのシステムを用いて、西武ライオンズと体型計測の効率化に取り組むほか、フェンシング協会で強化に向けた取り組みが行われているそうです。
このような装置が現場で簡便に使われるようになると競技力向上に役に立つフィードバックがさらにできるかもしれませんね。
■「IoT時代のスポーツ価値共創デザイン」
〜トップチームから、大学体育会、学校体育、
地域スポーツまで〜
続いてはSDM研究科の教授でもある神武先生のセッション。もともと航空宇宙学を専攻し、NASAでの勤務経験も神武先生ですが、現在はその測位技術をスポーツに応用して様々な取り組みを行っています。
トップチームでの試みとしては、ラグビー日本代表でのGNSS(全球測位衛星システム)を用いた分析の事例を紹介していました。
サッカーやラグビーの場合、オーストラリアのカタパルト社製のGPS内蔵デバイスを使用することが一般的ですが、やはり製品の値段が高さがネックです。
そこで、より安価でGPSよりも精度が高いGNSSを用いることで、選手のパフォーマンス評価をしているそうです。
また、慶應義塾大学蹴球部では、GNSSに加えてドローンを用いた映像取得をし、戦術の分析などに役立てているとのこと。実際に部員にはドローンを打ち上げる専門の部員がいるそうです笑
(ちなみにドローンの打ち上げには様々な制約がありますが、慶應義塾大学のグラウンドは国土交通省に許可を取っているため、自由に打ち上げることができるそう。)
また、小中学生向けには、ラグビー教室を行っていました。
このラグビー教室は今までのものとは少し毛色が違い、午前中はGNSSなどのセンサーをつけて実際にラグビーの試合を行い、午後は午前中に取った自分たちのデータを分析することを体験するのです。
ゲームに負けたチームの子に何故自分たちのチームが負けてしまったのかを聞いてみると、”私達のチームのほうが走っていたのに勝てなかった、、、”などと答える子がいたそう。
しかし、実際に自分でデータを分析してみると、自分たちのチームより相手チームのほうが走っていることが明らかになり、自分の感覚とのずれを明らかにすることができたそうです。育成年代からこのようなことが体験できるスポーツ教室はほぼないと思うので、良い試みだと思います。
このように様々な年代に対して取り組みを行っている神武先生ですが、新たに横浜市と富士通、SDMとの座組で”スポーツデータみらいデザインラボ”を設立。Iotや蓄積されたデータを活用して、新たなビジネスを推進していくとのことです。
宇宙開発での取り組みがスポーツに応用され、それがトップクラスの選手だけでなく、自治体を巻き込み小中学生でも体験できるということで、この一貫の取り組みは非常に素晴らしいものだと感じました。
僕自身がここで紹介したセッションはあくまでの本イベントの一部に過ぎず、他にも魅力的なものがたくさんありました。
ただ危惧するのは、やはりこのような場所にフィギュアスケートの話題はほぼないこと。また、関係者も見かけないということですね。
それ故に自分にもチャンスがある!というふうにポジティブに捉えていますが。
気になる人は一部のセッションがこちらに載っているので、是非ご視聴いただければと思います。