さて一発目の記事は、2018年2月23日・24日に米国ボストンで行われたMIT Sloan Schoolが主催するSports Analytics Conference(以下MIT SSAC)2018の参加報告になります。
会社の上司に是非参加したい!と打診した所快くOKしてもらい、念願叶って行くことができました!
目次
■日本国内スポーツカンファレンス発足の原点となったカンファレンス

近年AIやビックデータがバズワードになっているように、スポーツ界でもこれらの分野を内包したアナリティクスの分野は注目を集めています。日本国内でも2つの大きなカンファレンスが行われています。
1つは2014年に当時日本バレーボール協会のアナリストであった渡辺啓太さんらを中心に発足された、”日本スポーツアナリスト協会”が毎年主催しているスポーツアナリティクスジャパン。
もう1つは2016年に第一回が開催された慶應義塾大学大学院システムマネジメント研究科(以下SDM)が主催する”SPORTSX”です。
このSportsXの原点となったのが、今回参加したMIT SSACなのです。発起人であるSDM研究科特任講師・株式会社ユーフォリア代表橋口様がこちらのカンファレンスに刺激を受け、日本でもやらなければ!と感じたことがきっかけだそうです。実際に非常に熱量の大きいカンファレンスでした。。。
■MIT SAACは大規模なコミュニティ形成の場
オープニングセッションの様子
”スポーツ業界でもアナリティクスの重要性について議論する場所が必要だ”という思いから2006年に始まったこのカンファレンスも今年で12回目を迎えます。
第1回は175名の参加者ということでしたが、今では3500名以上が参加するほど大規模なものになっています。
MLB・NFL・NHL・NBAなど各種リーグ関係者、大学教授、企業の方など、業界を代表する方たちが多数のセッションを設けます。なんと今年はオバマ前大統領が参加するセッションもありました!
セッションに加えて、企業展示、Eスポーツのデモ試合、ハッカソン、研究成果発表などが同時に行われており、とても一人では消化しきれません。
企業展示ブース
通路には研究発表用ポスターが並んでいます
中でも特徴的なのは”企業と学生のマッチングサービス”。
スーツを身に纏いリクルーティング活動が行われています。学生向けに履歴書のチェックをしてくれるサービスもあるのは驚きです。
このイベントの参加費は一般で600$以上、学生でも250$と決して安くはありません。スポーツ業界全体で高度な人材の獲得に注力している様子が伝わります。
■参加者コミュティアプリが非常に有益!
絶え間なくセッションが続くので、なかなか登壇者の方とコミュニケーションを取ることができません。また並行して色々な催し物が行われているので、自分の見たいものを全て見るのは不可能。。
そんなときに活躍するのがイベント参加者向けのSNSアプリ。参加者同士のコミュニケーションだけではなく、一部登壇者とも直接コミュニケーションを取ることができます。

事前に登壇者にどのような内容かを聞いています

SNSのように誰もが投稿できます
「今日これから時間有るから話そうぜー」など皆気軽にポストしていました。
僕もこのアプリを使って登壇者に質問をしたり、使った資料を共有してくれーとお願いしていました。
イベント全体でコミュニティ形成の斡旋をして頂けるのは非常にいいことですね。(ちょうど平昌オリンピックのときだったので、フィギュアスケートの良い分析記事見つけたよ!とポストしてる人もいて個人的に役立ちました笑)
■まだまだ少ない日本からの参加者。。。
SDM研究科・ユーフォリア代表橋口様に取りまとめて頂き、今回のイベントに参加する日本人の方々をご紹介頂きました。
日本スポーツアナリティクス協会の方々や日経スポーツイノベーターズを担当している方などそうそうたるメンバー、、、の中にちょこんとまじり12人で適宜情報交換をしながら参加させて頂きました。
イベント前日には全員が集まり事前情報共有会。本カンファレンスに複数回参加されている方も多く、とてもためになりました!後日国内で報告会が開催されるとのことですので、楽しみです!
日本人参加者が集まり会場近くのスポーツバーにて事前情報共有会
アプリで検索をしてみても日本からの参加者は多く無かったように思います。
(アナウンスでは25人程度だったそうです)会場内で日本語を聞くことはこのメンバーとの会話以外にはありませんでした。今後是非とも日本から登壇する人が現れると良いですね。
■スポーツ界でも高いデータ分析能力が求められる時代へ、、、
僕はスポーツ市場でどのような分析が行われているかに非常に興味がありましたので、AI・機械学習系のセッション、またワークショップを中心に参加致しました。
一番驚いたのは、この“ワークショップ”です。大きな会場で行われているセッションとは違い、少し小さな会場でインタラクティブな講義を行うものです。
データ分析系のワークショップでは、実際にRやPython、Javascriptなどでコーディングをしながらデータのビジュアライゼーションをするようなものがいくつかありました。日本のスポーツ関連のカンファレンスでは、まずこのようなものはみられません。
Rを使いNHLのデータ分析を実際に行います
データ可視化・グラフの作成〜最後は主成分分析(PCA)まで行いました
加えてチームでアナリストとして活躍している方が、”理想的なAPIの設計”について話していたのも衝撃的でした。彼のバックグラウンドは言うまでもなくエンジニア。
日本のカンファレンスで登壇するアナリストの方は映像を活用したコーチングをしている方がメインであり、エンジニアリング、統計や機械学習に精通している方々はほとんどいないのが現状だと感じます。
先日ヤンキースの上級アナリストの募集要項がニュースで話題になっていました(統計などの博士号や「R」の知識)が、まさにスポーツ指導の実現場でもデータを適切に扱える人材、またエンジニアリングに精通している人材など高度な人材が求められていることが伺えます。
また、ピッツバーグ大学の教授が機械学習に関してワークショップを開いていましたが、大学ではスポーツのデータ分析の授業があり、NBAやNBLのデータを用いて授業が行われているというのも印象的でした。
日本ではスポーツのデータを業界外の人が使うことが難しい印象があります。スポーツのデータ解析コンペが開催されるなど外部の人がスポーツのデータに触れる機会は徐々に出来てきていますが、参加者が企業に属さない学生のみに限定されている点などは非常に残念に思います。
いろいろな人がデータにアクセスでき、知見を共有することで発展していけるような環境になるといいなーと感じます。