Paper Readingはほぼ自分用の簡易的な論文まとめです
・論文基本情報
Kinematic analysis of figure skating jump by using wearable inertial measurement units(2020)
Yuchen Shi , Atsushi Ozaki and Masaaki Honda
Waseda University
13th conference of the International Sports Engineering Association,Proceeding (ISEA2020)
・どんな論文か
・ウェアラブルセンサーを用いて、フリップジャンプの運動学的評価を行う。
・先行研究との差分(新規性)
・ジャンプが成功した場合と失敗した場合の大きな違いについては研究が十分行われていない。
・映像を用いた研究では、リアルタイムの解析が難しい他、環境光の影響などを受け、結果が不確実な可能性。
・ウェアラブルセンサーを用いて、回転数の異なるジャンプ間の運動学的有意差と、成功させるための要因を明らかにする
・手法概要
・男性被験者1名を対象に1F,2F,3Fを跳んでもらう
・5つのセンサーでデータ取得(100Hz)、6台のカメラで映像撮影(60fps)

・垂直速度の最大点を離氷、最小点を着氷と定義。その間をFlight time(FT)で推定。FTの真値は映像から取得。
・身体質量中心ベースの7つの運動学的パラメータを比較
- 水平速度(HV)
- ジャンプの高さ(FH)
- 離氷の角度ー速度ベクトルと水平面との角度(ToA)
- 離氷の際の傾きー胴体のy軸と垂直軸の角度(ToT)
- 最高回転速度到達までの時間(TtoTP)
- 回転角度(RinA)
- 平均角速度(AV)
・上記以外に身体セグメントから4つ角速度の差を比較
- 胸部と骨盤
- 骨盤と大腿部
- 大腿部と下腿部
- 下腿と足底
・正規性を検定した後、1F,2F,3Foの間で等分散性の検定。3Foと3Fxの間でT検定実施。
・結果
・FTの真値と推定とのRMSEは1F,2F,3Fo,3Fx,3Fpで5.97%, 5.79%, 11.82%, 9.14%,10.49%。(3Fo:成功、3Fx:失敗、3Fp:パンク)
・1F VS 2F VS 3Fo

- 離氷時垂直速度
2Fと比較して72.7%増加(p<0.0001)、2Fから3Foでは10.7%増加(p=0.006)。 - 平均角速度
1Fから2Fまで112.5%増加(p<0.0001)、2Fから3Foまで26.1%増加(p<0.0001)、1Fから3Fまで168.0%増加(p<0.0001) - 離氷時水平速度
1Fから2Fまで35.50%減少し(p<0.0001)、1Fから3Foまで31.09%減少(p<0.0001) - 離氷角度
TtoでのToAは1Fから2Fでは97.62%(p<0.0001)、1Fから3Foでは104.41%(p=0.01)増加 - 離氷の際の傾き
3Foは1Fと比較して56.5%増加(p=0.008)、2Fは1Fと比較して平均29.9%増加し(p=0.01)、3Foは1Fと比較して平均29.9%増加 - 最大角速度までの到達時間
3Fで最大角速度を達成するために手足を体に密着させて保持する時間は0.42秒で,FTの67.7%であった。2Fでは37.0%で、平均で52.4%減少しています(p<0.0001)。1Fは、平均で約0.08秒であった。 - 回転角度
3Foの平均1.84であり、61.3%の回転数であった。2Fと1Fについては64.0%と53%であった。 - 角速度の差
1F と2Fとの間で以下の2つに有意差
胸部と骨盤
骨盤と下腿
・3Fo VS 3Fx

- 滞空時間、跳躍高、離氷の際の傾きにおいて、有意差。
- 回転角度は3Fxの方が小さい
- 離氷の際の傾きは3Lxの方が大きい
・議論
・回転数の違うアクセルの先行研究では、垂直速度、滞空時間、ジャンプの高さに有意差がないことが指摘されているが、トゥジャンプでは、すべて増加されていた。本研究のフリップは同じ結果。
・アクセルと比べるとトゥジャンプは接線運動(支持脚のつま先に対する身体の質量中心の角運動)から垂直速度を得やすい。=離氷前の半回転から速度の接線成分を増加させやすくしている。アクセルと比べるとトゥジャンプは空中での回転が少ない(トリプルアクセル78%(先行研究)、3F:61.3% 2F:64.0% 1F:53.0% (本研究))
⇢プレローテーションによってトゥジャンプの方がより回転力を得やすくなっている可能性がある?