今まで様々なスポーツアナリティクス関連のイベントに参加してきましたが、フィギュアスケートの話を聞いたことは全くありませんでした。
また、自分が競技を行ってきた中でも、フィギュアスケート界でいわゆるスポーツアナリストのような存在を見たことはありませんでした。
そんな中、ついにフィギュアスケートアナリストと呼べる存在を見つけたのでご紹介します!
フィギュアスケート界のDartfishマスター!
フィギュア界のアナリストの正体はフランスのフィギュアスケートインストラクターであるArnaud Mucciniさん。
彼が武器にしているのは、スポーツアナリスト界隈ではおなじみのダートフィッシュというソフトウェアを用いたビデオ分析です。
過去にはカロリーナ・コストナー選手やエリザベータ・トゥクタミシェワ選手などのトップスケーターに対しても分析を行っていたようです。
09年にPerform’Liveという会社を立ち上げ、フィギュアだけでなく、スピードスケート、ショートトラック、アイスホッケーなど氷上競技を対象に分析サービスを行っています。
氷上でフィードバックを行う様子(サイトより引用)
具体的なサービスは??
このPerform’Liveでは動画を送ることで有料で分析を行ってもらうことができるそう。
具体的には以下のような内容だそうです。
新しいジャンプを習得したい人向け
- 角度など鍵となるポイントに描画やコメントを加えたジャンプの映像分析
- エリートスケーターとの比較
- <料金>40ユーロ/ビデオ、4パッケージで140ユーロ

エリートスケーターとの比較(サイトより引用)
さらに進んだ分析を求める人向け
- ストロモーションを使用した、より高度なジャンプの映像分析。(身体の位置角度、時間、高さ、幅などを算出、描画
- エリートスケーターとの比較
- <料金>80ユーロ/ビデオ、4パッゲージで300ユーロ

ストロモーションを用いた分析(サイトより引用)
その他、プログラム全体の分析(全体のカバー範囲や距離、速度など)を行ってくれるサービスも提供しているとか!
このようなことをやっている人は今まで見たことがありませんでした!
具体的な分析内容は??
公式サイトにあるブログには、youtubeの映像をもとにトップスケーターの映像分析の記事などが多数掲載されています。


分析記事例(サイトから引用)
上記のようにスケーター個人に焦点があたっているものが多いため、ここでは詳細に取り扱いませんが、興味がある方は、フィギュアスケートアナリストがどのような分析を行っているのか是非見てみてください。
Youtubeやインスタでも発信されていますのでチェックしてみてください!
分析の算出方法は?
ダートフィッシュについては自分も使用経験がありますが、放映映像とダートフィッシュで一体どのようにジャンプの高さや距離を算出しているのかが気になったので、実際に本人にメールで問い合わせをしてみました!
返答としては以下のようになりました。
- 映像中から基準点をピックアップする
- スケーターの公式身長を真値とする
- 上記からピクセルベースで推定
また計測誤差については、
「私は研究室ではなく、指導現場で働いている。私の考えではパフォーマンスの評価には概算値がわかれば問題がない(例えば102cmと104.1588cmでは評価は変わらない)。選手やコーチのサポートになる情報を提供している」
との回答でした。確かに現場での指導については厳密な精度よりも、ツールの使いやすさやフィードバックの早さなどのほうが重要だと感じますね!
日本では他のスポーツでは今回紹介したダートフィッシュやスポーツコードなどの分析ソフトウェアは使われ始め、コーチングレベルでの分析はメジャーになりつつありますが、フィギュアの競技現場ではこのようなツールを使っているところを(僕が知る限りでは)見たことがありません。
このようなツールをうまく指導に組み込めるとより良いのではないかなと個人的には感じています。
終わりに
今回はフィギュアスケートアナリストのArnaud Mucciniさんを取り上げました。
やはり世界は広く、フィギュアスケート業界にもアナリストはすでにいらっしゃるということがわかりました。いつか直接お話を聞いてみたい!
ちなみに、彼を含むPerform’Liveの現在の拠点は中国の北京だそう。北京オリンピックに向けてフィギュアスケート中国代表チームのサポートを行っているそうです。
もちろんチームとNDAを結んでいる関係で、詳細については教えられないということでしたが、ここで紹介した以外にも、北京オリンピックに向けての科学技術サポートが行われているとのことです。(Qoncept社とフジテレビ社が共同開発したアイスコープにも注目しているようでしたので、似たようなことにも取り組んでいるかもしれませんね!)
引き続き情報収集を行っていきたいなと思いました。

