2018年11月〜勤務していた国立スポーツ科学センターを2022年1月末で退職しました。同時に現場で分析を行うスポーツアナリストとしても卒業しました!

直近2ヶ月間は学業に時間を割きながら、業務委託ベースでデータサイエンス関連の仕事をしていました。
4月からは民間市場調査企業のスポーツ部門の研究員として、社会科学の分野でデータサイエンスを活用した業務に携わります。
スポーツアナリストになりたい方、またその後のキャリアの参考になればと思い、以下の2点についてまとめていきます。
- どのようなことをやっていたか?
- 何故転職をしたか?
- 現場のアナリストから民間企業への転職活動
- 今後について
どのようなことをやっていたか?
国立スポーツ科学センターのスポーツ科学部、ハイパフォーマンスサポート事業に所属していました。東京(夏季)・北京(冬季)オリパラでメダル獲得が期待される競技の日本代表チームに映像分析スタッフとして帯同し、現場での映像分析を担当しました。
なお、サポート対象競技は有識者の判断のもとスポーツ庁が政策として定めており、その競技の中から各個人の担当がアサインされる方式です。
僕の場合はスポット的なサポートも含めると、以下の5競技を担当しました。
- 夏季)空手、パラカヌー、視覚障害柔道、ユニバーサルリレー(陸上)
- 冬季)ショートトラックスピードスケート

日本代表チームのスタッフとして大会に参加します
代表合宿や国内大会、国際大会に帯同し、映像撮影・編集・整理、映像からのスタッツ集計や分析を行っていました。
何者でもなく、入社まで何の伝のなかった自分がこのような業務に携われるのは非常に恵まれた機会でした。
サポートの内容は競技によってまちまちですが、スポーツアナリスト向けの映像分析ソフトを使い編集などを行ったり、作業の自動化などにプログラミングを用いていました。
気になる分析のレベルは、大学教養課程レベルの記述統計レベルでした。
大会が行われる場所であれば、世界中どこにでもいくことになるので、コロナ前の1年半程度でも本当に多くの国や都市を訪れました。この仕事をしていなかったらなかなか行くこともなかったかなと思うところも多かったです。
ざっと以下であり、世界の色々な都市を回りたい方にはおすすめの職業かもしれません笑
米国(ソルトレイクシティ)カナダ(モントリオール)フランス(パリ)イタリア(トリノ、ジェノバ)ドイツ(ドレスデン)オーストリア(ザルツブルグ)ブルガリア(ソフィア)ロシア(モスクワ)カザフスタン(アルマトイ)アゼルバイジャン(バクー)モロッコ(ラバト)中国(上海)他国内多数…


海外の多くのスケートリンクにも訪れました
一方、五輪については、無観客で実施だったこともあり、多くの競技でスタッフの会場入りが制限されていたこともあり、直接関わることはできませんでした。
何故転職をしたか?
ハイパフォーマンスサポート事業はオリパラを周期にしている事業です。そのため契約形態は契約職員になり、オリパラ終了後の年度末で契約期間が満了します。
そのため東京or北京終了後には転職をすることが決まっていました。
もともとスポーツとデータサイエンスの掛け合わせでキャリアを歩むことは決めていましたが、その中で興味を持ったのがシンクタンク・市場調査の分野でした。理由は大きく2つあります。
1つ目はコロナ禍による社会情勢の大きな変化です。
スポーツが不要不急・社会に不可欠なものと認識されてしまったと感じました。実際に緊急事態宣言が出たときは仕事もほとんどストップしてしまい、五輪についてもこのような状況で何故やるのか?という世論の意見が多数派だったように思います。この経験を通して、そもそもスポーツの価値とは何なのか。スポーツの社会に対する現在地はどのようなものなのか?を考えるようになり、次の仕事では中立的な立場でよりマクロな視点でスポーツを捉えることで、社会に価値提供がしたいと感じました。
2つ目はスポーツ界をマクロな視点から見てファクトを提供することで業界に貢献したいと思ったためです。
大変ありがたいことに、この仕事を始めてから複数の大学や講演会で講演する機会を頂戴しました。
その際に、自分が経験してきたサポート事例を話すことはできるものの、スポーツアナリティクス業界やスポーツとデータサイエンスの現在地などを問われた際に、それをメタ的にファクトベースで話すことが非常に難しいと感じていました。
この意味で、競技の面では経験と勘ではなくファクトで客観的な視座を与えるはずのアナリストが、”一歩視点をマクロにした業界動向などについては経験と勘で話している”という状況は自分の中でなんとも皮肉だなと強く感じていたのです。
とかく業界人は”スポーツ界”という括りで語りがちなのですが、ミクロな視点でのファクトを提供することで、業界全体でより建設的な議論が進むようになればと思い、次のキャリアではこちらに貢献したいと考えました。
アナリストから民間企業への転職活動
専門外の分野への、民間企業の一般的な方式での転職ではあったものの、転職活動についてはそれほど苦労せず、戦績は1勝1敗でした。(ただし、そのようなポストがある会社を探すのはかなり苦労しました)
スポーツアナリストから一般的な転職活動を通して民間企業に転職をする人もなかなかいないと思うので参考になるかはわかりませんが、個人的には現場のアナリストから転職するにあたっては、アナリスト以外の活動でアピールすることも重要なのではないかと思っており、特に以下の点に気をつけました。
- データ分析能力をアピールしたいが、スポーツアナリストとデータサイエンティストを比べた場合に分析の高度さが異なるため、分析能力が最低限あることをうまくアピールする必要があること。
- 受託ではなく自社企画の調査製品を扱っている会社に行きたかったため、分析について一気通貫で作業を行える能力をアピールする必要があること。
このあたりは、データサイエンスとスポーツの文脈で同時に行っていた、研究の分野でのアウトプットを活用しました。
論文執筆や学会発表の経験を通して、分野は違えど調査・分析・アカデミックなバックグラウンドの素養をアピールできたのだと思います。また、業務では記述統計レベルでしたが、研究となるともう少し高度な分析手法を用いるので、このあたりもアピールできたと思います。コロナ禍でもあったので、統計検定やPythonの資格など最低限データサイエンティスト的な民間資格も取っておきました。
スポーツアナリストの業務は秘匿性が高いため、基本的に業務の内容について外向けにアウトプットすることは難しく、自分の実績をなかなかアピールすることが難しいと思います。また業務についても民間の企業人に理解されにくく、企業で活躍できるイメージをもたせることが難しいかもしれません。
もし本業で体外的なアウトプットを行う場がある場合は積極的に引き受け、実績としてアピールできる方が良いと思います。
また、本業以外で自分の技術がアピールできる場や機会があれば、積極的に行動することをおすすめします。
今後について
本業ではマクロな視点でのデータ分析、大学での研究を含む個人的な活動においてはミクロな視点でのデータ分析を行っていき、それぞれの立場から価値提供ができるようになっていく所存です。
また、これまでと同様にアカデミックとビジネス(現場)の両輪のバックグラウンドを醸成していき、どちらの方々でも建設的な話ができる人材になれるようにこれからも精進していきます。
特に博士課程に関しては22年度が3年目となるので、標準年度で学位取得ができるようにスパートをかけていきたいです。
多方面でコラボの依頼があればぜひお気軽にご連絡頂ければと思います!
皆様引き続き何卒よろしくお願い致します。

約3年半でしたが貴重な経験をありがとうございました!