※こちらの記事の内容を把握した上でお読みください
本格的なシーズンも近づいてきたので、ずーっと書きたかったフィギュアスケートについて書きます!
というのも、先日行われたネーベルホルン杯の男子SPプログラムで、ロシアの アルトゥール・ドミトリエフ選手が、今までにないイノベーティブ(?)なコンビネーションジャンプを跳んだのを見たからです!
ということで、、、まずはこちらを御覧ください。
Innovative and crazy – Artur Dmitriev with a triple lutz-triple flip combo in the short at #NebelhornTrophy2018!! pic.twitter.com/S2AN53NCvc
— Jackie Wong (@rockerskating) 2018年9月28日
この、コンビネーションジャンプ。
一見普通の3回転+3回転のジャンプに見えます。
フィギュアスケートに詳しくない方にとっては、
着氷もちょっと乱れてるし、何がそんなにすごいんだ?
と思うかもしれません。
ですが、これが物凄く画期的なジャンプなのです!おそらく試合で行われたのは世界初でしょう。
その秘密は”最初のジャンプの着氷する足”にあります!
フィギュアスケートのジャンプの種類は、踏み切る際のエッジとトゥピック(スケートリンクにあるつま先のギザギザ)を使うか否かで、アクセル・ルッツ・フリップ・ループ・サルコウ・トゥループの6種類に分別されます。(後に下で簡単にまとめますので、読み進めてください。)
ですが、そのいずれにおいても、(回転が反時計回りの選手の場合)着氷は基本的には右足のバックアウトサイドになるのです。↓な感じ。
コンビネーションジャンプは降りた後すぐに続けてジャンプを跳ばなければなりません。
そのため二本目以降のジャンプは基本的に、右足のバックアウトサイドで踏み切るトゥループジャンプ、またはループジャンプに限られるのです。
しかし、動画のジャンプでは、左足のバックインサイドで着氷をしているのです!

ちょっとわかりづらいですが、左足着氷です。
こうすることで、二本目のジャンプに左足のバックインサイドで踏み切るサルコウジャンプとフリップジャンプを持ってくることが出来るのです!
あくまでも理論上は。
なお、6種類のジャンプはそれぞれ難易度が決められており、同じ回転数であれば以下のような順番で得点が高くなります。
- アクセル(A):フォアアウトサイドで踏切。唯一前向きで踏み切り、後ろ向きで着氷するため半回転多く回る必要があることから、通称◯回転半ジャンプと呼ばれる。
- ルッツ(Lz):左足のバックアウトサイドで踏切。トゥをつく。
- フリップ(F):左足のバックインサイドで踏切。トゥをつく。フリップとルッツは見分け、跳び分けが難しいです。
- ループ(Lo):右足のバックアウトサイドで踏切。トゥをつかない。
- サルコウ(S):左足のバックインサイドで踏切。トゥをつかない。
- トゥループ(T):右足のバックアウトサイドで踏切。トゥをつく。
フリップジャンプはループジャンプやトゥループジャンプと比べて基礎点も高いため、コンビネーションジャンプの基礎点をあげることができるのです。
- 3Lz+3T = 5.9 + 4.2 = 10.1
- 3Lz+3Lo = 5.9 + 4.9 = 10.8
- 3Lz+3F = 5.9 + 5.3 = 11.2
これまで意外と知られていなかったのですが、ジャンプの着氷の足は、実はどちらでも良いのです。

17-18シーズンからのルール

16−17シーズンからのルール(微妙に表記が異なります)
ただ、”間違ったエッジでの着氷”というのが少し難しいところですね。
過去ルールを見る限り、通常ジャンプはやはりバックアウトサイドが”正解”なのでしょうか、、、
昨シーズンまでのハーフループ、18−19シーズンからはオイラー(1Eu)も同じで、左足のバックインサイドで着氷します。
ルール上同じジャンプを跳べる回数に制限があり、コンビネーションジャンプの幅を広げるために、敢えて左足インサイドで着氷する一回転ジャンプを挟んでいるのです。
このような例外はありますが、フィギュアスケートのジャンプの回転は身体の右側を軸にして行うのが一般的です。
右足に左足を巻き付け、両手を身体の中心に引き寄せることにより軸を出来る限り細くすることで、あの高速回転を可能にしているのです。
そのため、多回転のジャンプで、着氷に入る前の段階で回転軸を緩めながら左に軸を移し、そのまま片足で着氷することはひじょーーに難しく、また恐ろしいことなのです!
頭では考えたことがあっても、まさか試合でやってくる選手がいるとは思わず、とても驚いたジャンプでありました。。。
ただやっぱり加点があまり見込めないような気がしていて、3Lz+3Tと比較して1.1点の基礎点を上げるために、この技を試合(特にショートプログラム)で行うのが良いかどうかは疑問が残りますね、、、
今回のジャンプも加点は0.24点しかついていませんし。
いずれにせよ今後もこのジャンプがどう評価されていくのか、実に興味深いです!
ちなみに面白いコンビネーションジャンプ(?)の例では、小塚崇彦選手が以前エキシビでやっていた3S+逆回転の2Sというものがありましたね。
ジャンプとジャンプの間にエッジの切り替えが入っているため、試合ではコンビネーションジャンプとは認められないと思いますが、こちらも非常に面白いジャンプの組み合わせです。
どうしても4回転に注目が集まりがちですが、このような違いに気がつくようになると、よりフィギュアスケートを楽しめるのではないかと思います!
引き続きフィギュアスケートについてもちょくちょく書いていけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。