フィギュアスケート

アーティスティックスポーツ研究序説 第Ⅰ部「スポーツは芸術か否か」論争

6月15日に白水社から出版された、町田樹先生著『アーティスティックスポーツ研究序説』。

 


自身は社会科学系やアート面は全くの専門外。フィギュアスケートもほぼ100%スポーツとして捉えていた身なのですが、この本がかなり面白い。。。

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第Ⅰ部読了後に考えたことをここにまとめて行こうと思います。

なお本記事では本書の内容に関する記述があります。

本書を研究資料として扱い、適切な範囲の引用を心がけておりますが、まだ本書を読んでいない方は先に読まれることをおすすめいたします。

 

 

想定読者

  • アーティスティックスポーツ研究序説の第Ⅰ部を読み終えている方

 

スポーツはアートか否か?

第Ⅰ部前半に書かれているのは「スポーツはアートか否か」に関する研究の総説。

1900年代後半からこの論争が行われており、その全貌がまとめられている。

今までスポーツ界に身を置いてきたものの、”スポーツがアートかどうか?”という問いを持ったことがなかったので、個人的にかなり斬新な問い。どちらの立場の主張も大変興味深く拝見した。

疑問に思ったのは、この問いを考える意味である。スポーツがアートかどうかを考えた先に何があるのか?という点だ。

(著者自身が、この議論の中からアーティスティックスポーツという新たなスポーツジャンルの存在の確認と・その後の発展につなげている点は理解している。あくまでもそれまでの研究者の話である。)

これについては、総説の中にある第三者的視点からの研究が物語っている。

つまり、『アート』という概念が『スポーツ』という概念に対して何らかの意味合いで優っているという前提条件がそこにあるということである。

実際スポーツがアートであるという肯定派の意見では、『アート』の価値を至上であると捉えている節があり、『スポーツ』を『アート』の領域にまで引き上げたいという意識がそこにあるのだということが記述されている。(なるほどそういうことか、、、!)

正直なところ「アート」が「スポーツ」より優れているという考え方は理解できていない。しかし、もしそうであるとするならばこの議論はかなり意義があると腑に落ちた。

 

それは『eスポーツ=ゲーム』が『スポーツ』なのか論争と同じなのではないかと感じたからだ。

スポーツという言葉の持つ価値

eスポーツがスポーツか否かも議論が分かれる話であり、賛成派・否定派が存在する。「この議論自体に意味がない。わざわざスポーツと一緒にしなくても良い」という意見もある。

しかし、この議論そのものとeスポーツという単語が持つ意味は大きい。

その理由が「スポーツ」という概念が「ゲーム」という概念に対して何らかの意味合いで優っているからであるだろう。

この話については以下のNote記事が大変参考になる。

“eスポーツ”という言葉ができて、スポーツに仲間入りしたことで良かったことは色々ありました。

メディアがスポーツのコーナーで扱ってくれました。国民体育大会の種目として選ばれました。オリンピックの種目候補にもなりました。「eスポーツはスポーツだ」という主張をする人がいたおかげで、公で取り上げられる機会が増えました。ありがたいことです。

一部には”eスポーツ”という言葉自体がいらないという人もいます。ゲーム大会でいいんじゃないか。プレイヤーや興行の現場の人は言葉に囚われていないんだと。

いやでも、“eスポーツ”っていう言葉は凄いんです。eスポーツをプロの興行として(つまりはプレイの巧拙を競うだけではなく、金を稼ぐビジネスとして)成り立たすために言葉は絶大な威力を発揮します。スポンサーが注目してくれるのも、メディアがリリースをとりあげてくれるのも、すべては”eスポーツ”という言葉、つまりは分類があるからなんです。

eスポーツという言葉を作ったのは新しい分類を設けることで、人々が想像・創造しやすいようにするためでしょう。個別の違い(タイトルの違い)を乗り越えて、共通する部分を抜き出して、体系的に考えたり、新しいコンテンツを生み出したりすることを促進するのが分類の意義です。興行としてのeスポーツの発展は言葉が与えられたからだと思います。

 

自分自身も前職のスポーツ用品メーカー勤務時に、eスポーツを含むニュースポーツ関連企業の方とお話をしたことがあった。そのときにも、

  • 「ゲームではなくてスポーツとして捉えてもらいたいから、スポーツメーカーと一緒に仕事をしたいと思っている。」
  • 「プロゲームプレイヤーではなく、アスリートとしてのイメージを訴求したい」

というお話を伺った。

これはまさに「ゲーム」よりも「スポーツ」が何らかの側面で優っていることの象徴だろう。

つまりこのような論争を通じて、”仲間入り”をすることで、業界のポジションを確立する。これが重要な側面だということを理解することができた。

Note記事では”eスポーツはスポーツのアナロジーから卒業してよいと思います”と書かれている。

今のポジションにあるスポーツが、これから先アートであるか否かの議論を続けるべきかはわからない。

しかし、次章以降でアーティスティックスポーツを議論していく上で、スポーツとアートの論争を整理することはかなり意義の大きいことであると感じた。

アーティスティックスポーツの可能性

 

eスポーツとスポーツの例では理解できたが、スポーツとアートに関しての概念価値的優劣についてまだ自分の中で腹落ちしていない。そういう意味ではスポーツはアートか否かについては否定派の意見に近い立場だろう。

この点は、今後本書を読みアーティスティックスポーツについての認識を深めることで新たな気付きがあるのかもしれないので、大変楽しみである。

 

もしアートがスポーツよりも優れた概念であり、著者が考えるアーティスティックスポーツがその側面を持つスポーツであるならば、それはかなりユニークで価値の高いスポーツのポジションを確固たるものにできるのかもしれない、、、!という期待を抱いた。

 

長くなってしまったので、第Ⅰ部後半のアーティスティックスポーツの原理については別の記事にまとめることとします。後半もかなり面白い。。。

 

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ABOUT ME
@hironowa_ru
修士まではスポーツバイオメカニクスを専攻。新卒で総合スポーツ用品メーカーに入社し、デジタル分野の新規事業開発に従事。現在は日本代表選手団に向けた映像分析サポートを行っており、大学院でコンピュータビジョンの観点からスポーツ映像解析の研究を行っている。
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